Petalの制作現場/猿江硝子

2025年11月、Petalを作るところを見学させてもらいに猿江硝子さんを訪れました。
北風が吹く曇り空の下、猿江硝子さんに着くとこの寒さでも窓は開いていて、
中を覗くと、みなさんが半袖でガラスと向き合っている姿がありました。

中に入ると、窯の近くはものすごい暑さでその迫力に圧倒され、
どこもかしこも危険とすぐ隣り合わせで、どこに立っていたらよいのかD-BROSチームは緊張であたふた。

「どれを作りましょうか。麦茶飲んでくださいね。Tシャツ、これでよかったかしら?」

気遣ってくれる言葉と温かい眼差し。

この方が、猿江硝子の創設者であり、日本を代表する硝子作家の越中真知子さんです。

私たちの会社で、以前撮影用に「こんなグラスを作ってほしい」と越中さんに依頼したのがその出会いの始まりでした。完成したグラスの佇まいがなんとも言えず美しく、
入れたお茶が何倍も美味しそうに映りました。

越中さんは、国の重要文化財のガラスでできた照明の修復や名だたるレストランの食器なども手掛けています。
 今回は、息を吹いて形をつくっていく吹きガラスの技法を見学させてもらいます。

 「どれを作りますか? 一応、いろいろと練習してみたんだけど」

何年かぶりにPetalを作るということで、感覚を取り戻すため、すでにいくつものPetalの商品を作ってくれていました。
グラスやボトルなど、どれも見てみたかったのですが、
Petalシリーズの中でも圧倒的な存在感のあるプレートLを作っていただくことになりました。
(Petal プレートL)


まず、いつもの定位置であろう場所に、使用する道具を並べていきます。
デザインや大きさの確認も済ませて、フーッと呼吸を整えキリッとハチマキを巻きました。
これから始まるんだ、と見ているこちらにも緊張感が漂います。
 ダルマと呼ばれる窯の中で燃え盛る炎に、竿の先のガラス玉を入れてトロトロ溶かし、窯の中から掬うように絡めて取ってきて、濡れた新聞紙とカーボン紙でガラスのかたまりの形を整えていきます。
ガラスの温度は約1400度。

 「最近の新聞紙はカラー印刷で、昔の新聞紙と印刷方法が違うんですよ。昔はインクの油が乗っていて紙質も柔らかかったんですけど、今は紙はすごく硬くなっていて、燃えやすいんです。紙に油が含んでいれば、ガラスがくっ付かないんですけど、今のはそれがダメで紙に焼けカスが付きやすいんです。それで、カーボンの布と合わせて使っています」

まだ赤くマグマのようになっているかたまりを、
新聞紙を持った手で撫でるようにしてガラスの形を作っていきます。ものすごい熱さのはずなのに、相反して静かな時間が流れます。ここで竿の先から息を吹き込み大きさも調整していきます。

ガラスの温度が下がると窯に入れて、温め直す。
今回は、筋模様を入れるモールと呼ばれる型に入れて、吹くという作業も入ってきます。
これを何度も何度も繰り返して、徐々にPetalの姿が現れてきました。

窯にガラスを入れた時の越中さんの視線は、“一瞬”を見逃さないという鋭いもので、
自在に形を変える生き物のようなガラスと対話をしているようでした。

ガラスを吹くことを何十年も続けてきたので、
窯を覗き込む角度で背中が曲がってしまったと言っていた越中さんですが、
工房の中をスタスタと早足で歩き、踏み台にサッと上り、
息を吹き込む姿は、第一線で活躍する職人さんの姿そのものでした。


話は戻り、調整を繰り返したガラスの大きさが決まってきたら、
お弟子さんが「ポンテ」と呼ばれる竿を、反対側の底に付け、吹き竿はトントンと叩いて外します。
「ポンテ」はイタリア語で「橋」を意味します。
見ているこちらは、両方から竿が付いている光景に一体何が起きたのかわかりませんでした。
持ち手を変えてることで、加工する場所を変えることができ、プレートの形になっていきます。
そして、最後に底からポンテを外すと形は完成です。




このままだと、ガラスの温度が急激に冷めてしまい割れてしまうそうで、
徐冷炉という約450度(冷やすと言っても高温!)の窯の中へ一日くらい置いて、
ゆっくりと温度を下げて出来上がっていきます。

 「一つ一つ丁寧に作られた」という言葉はありふれていますが、
実際にそれを目の当たりにすると、その素晴らしさは遥かに想像を超えていました。
徐々にPetalの形へと変化していく奇跡を見ているかのような時間。
出来上がったPetalは、艶やかでとガラス本来の美しさで光り輝いていました。

一つひとつに1点ものと言ってもいい個性があり、存在感のあるPetalシリーズをぜひ手に取ってみてください。

 

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